NGC2419

◎にっきさん(@neskionicky)「NGC2419」環壮

「……今日は酔ってないって言ったのに」
 夜道で振り向いたそーちゃんがつぶやいた。この人は、俺の都合の悪いことにばかり勘が働く。それとも、尾行されるのには慣れてんのかな。
「邪魔なら邪魔って言えば」
「そんなことないよ」
 散歩したかっただけだよ、でも皆眠たそうだったし、一人でもいいかなと思って。決まった歌詞みたいにそーちゃんは言う。口元は、寮でご飯を食べていた時のまま笑ってる。
「環くんもおいで」
 踊るような足取り、幸せを説く優しい声、冷えた手を握る細い指。二人だけの呼び名。望まれる歌。逃避行を咎められることのない夜。この毎日に、そーちゃんにとって当たり前のことなんて何一つない。いくらも歩かないうち、不意に抱き締められることも、当の相手に泣かれることも。
「どうしたの……?」
 俺をなだめるための問いも、透き通って俺に届く前に落ちる。二十年間、そんな言葉を、年下の男にかけたことがある? そーちゃん。
「ここにいなよ」
「ふふ、いるよ。寂しくなったの?」
「うん……」
 一人の時のそーちゃんはいつも、この日々が特別だってことを確かめてる。他の誰かのところへ行ってしまうならまだマシで、いつか不意に一人になられそうだから怖い。
 そーちゃんはそんな時でも、なんてことない顔してるのかもしれないけど。

……「NGC2419」中心からの距離は30万光年。他の銀河の引力の作用があれば、銀河系から放り出され銀河間空間をさまようといわれている