一人の夜を乗り越えて

◎ねぎちゃん(@negi_inana45)「一人の夜を乗り越えて」環壮

『君が大人になった時、返事をするよ』
 そーちゃんは笑ってそう言ってくれたから、たぶんあっさりフったりはしないんだろうけど、「その時」がいつまで経っても来ない。高校を卒業しても、ハタチになっても「うーん、まだかな」。この先何があるってんだよ。
「切符よし、資料よし」
 一人で明日の支度もできるようになった。できてるかは仕事が終わるまで分からないけれど、ひとまず眠い目をこすりながらベッドへ向かう。けれど途中で何かを踏んづけて、数年ぶりにひっくり返った。
「……あーあ」
 足を捕ったのは照明のリモコンみたいで、部屋がふっと真っ暗になった。どしんとついた尻のモチが痛くて、そのまま大の字に腕を広げる。いつまで経っても片付かないから、大人って認めてくんないのかな。潤んだ目をうっすら開けたら、天井にあるはずのないものがきらめいていた。
『眠る前に、僕の部屋へおいで』
 そーちゃんのちっちゃくてカタい字が、溜め込んだ光を放ってた。飛び起きて、一度壁に激突しながら、隣室の扉の前へ急ぐ。
「あ、ロケでいねえんだ! ちくしょー」
 また部屋へ飛んで戻って、充電中のスマホでラビチャを送る。こんな時に不在にしてんじゃねえよ。早く、早く帰ってきて。
 既読はつけど返ってこないメッセージにやきもきしながら、また天井を見上げる。電気のカサ、外れんのかな。ボスに一緒に謝りにいかなきゃ。シャザイの言葉を練っていたら、ピコピコ、と待ちわびた音がなった。
『そろそろ一人で眠れるようになってほしいな』
「そーじゃない!!」
 思わずスマホをぶん投げたら、洗濯物の山にダイブした。今夜も電気全開で寝て、何も知らなかったフリしてやろうかな。だって、あんなとこにラクガキするそーちゃんのほうが、ずっとずっとコドモじゃんか!

……「M13」1974年に地球からメッセージを送信。届くまで2万3500年かかる