ベガ

◎メリちゃん(@AwyScat)「ベガ」環壮

 生まれてきてくれてありがとう。そんな言葉を重ねながらも、この身に宿された奇跡全て、二人の間に閉じ込めることを選んだ。
「ガキは、できたら、いいかもしんねーけど。『かもしれない』ってだけのことだから」
 環くんに子供ができたら、きっといいお父さんになるんだろうね――そんな空想すら、愛がないと、環くんには叱られた。
「そーちゃん見てたら、そんなこと考えようって思わない。そーちゃんも、俺のことだけ見て。俺のこと、考えて」
 生まれたままの姿で執り行うのは、二人の死に方を定める儀式だ。環くんの体に口づけるたび、環くんのそばで生きるかもしれなかった、顔も知らない誰かが死んだ。
 親を、自らの生まれた場所を、否定した僕たちは知っている。二人で生きることを選んだ過去と、一人で生きることを選ぶ未来を、同時に肯定しながら呼吸はできない。それだけのことだけれど、たったそれだけのことで、僕たちは添い遂げられると誓うことができる。一生一緒にいられるだろうと、どんなに傷つけあっても、確信を持てる。
 そして傷つけあってきたからこそ、互いの生きる道を断つすべを知ってる。既にささいな、でも無数の傷がついている。
 この体を開いた時に、願ったのだ。
「一番奥に、二度と消えない傷を残して」
 その傷を、二つ目の心臓にする。あふれた血をめぐらせたこの体で、僕は一生を生きていく。

……「ベガ」夏の夜空で最も明るい。未来の周極星