プレセペ

◎たるさん(@dododoshindoi)「プレセペ」環壮

 星になって空から見守ってるとか、キュウリに乗って帰ってくるとか、みんな好き勝手言うけどちゃんと救われてる。
「おふくろはよく星の話してたからさ」
「うん」
「たぶん星になってんだと思う」
 パタンと台本の閉じられる音に、俺の気持ちがぴっと引き締まる。仕事と同じくらい、真面目な話だ。それだけ俺には、分からない内容のことも多いんだけど。
「信仰って、生き方を決めるもののように感じるけど」
「おお」
「ひいては死に方を決めるんだって」
「おー」
 ピンと来ません、みたいな顔を隠さずにいたら、そーちゃんはおかしそうに笑ってくれた。
「人は死んだらどこへ行くと思う?」
「んー。俺は空しか知らない」
「現代っ子だなあ」
「だってそこ以外見たことねえもん」
 大体そーちゃんだって現代っ子じゃん、そう開きかけた口が勝手に止まる。そーちゃんの笑顔は小さな炎みたいに、暖かいのにかすかで儚い。
「僕は、叔父さんが病気になってから、一度も会えなかったから」
だからどこへ行ったのか、そーちゃんは知らないのだという。
「俺が一緒に探してやろっか」
「空しか知らないのに?」
「うん。とりあえず待ち合わせはそこな」
「それなら君も、道に迷わないで来れるね」
 死ぬまでに地図くらい読めるようになりたいけどな。心の中で苦笑いして、俺が今日まで信じてきた、道しるべみたいな相方の顔を覗き込む。
「最初、あんたの言うことなんか聞くもんかって思ってた。なんか昔は怖かったんだ。大人の言うこと信じるの」
 だけど怖い時は怖いと言うことも、それをちょっとこらえることも、そーちゃんの隣で少しずつ覚えた。これからも生きてるうちにいろんなものを信じて、どこへでも行けるようになっとこう。
 もしかしたらその中の一つくらい、そーちゃんを助けてくれるかもしれないし。

……「プレセペ」古代ギリシャにおいて人間の霊が天上へ行き来する出入り口。ヒヤデス星団と同じ巨大な星雲から誕生