痛みをしるべにして

 トゲトゲの道を歩いて出会えた人は、俺を包み込めるようなまんまるな人じゃなくて、同じようにトゲトゲの道を歩いて、傷だらけになった人だった。
 だけど傷だらけの両腕を精一杯広げて、俺を守ろうとしてくれた。泣いてしまった時は抱きしめてくれた。一緒に傷だらけになる覚悟を決めてくれた。
 そうして、そーちゃんが弱いところを見せるようになってくれて初めて、俺は自分の中にも優しいところがあるかもしれないことを知ることができたのだ。
「明日のオフ、学校も仕事もないなんて久しぶりだろう。お疲れさま」
 窓際に寄せたそーちゃんのベッドの上で、そーちゃんが大きな瞳を細める。カーテンの裾から漏れる月明かりが、真っ白な頬を洗うみたいに照らしてる。
「へへ。がんばった」
「明日はやっぱり寝坊する?」
「そーちゃん見送って二度寝する」
「それって僕のベッドで?」
 もう、って溜め息をつきながら、そーちゃんがくすぐったそうに笑う。俺の胸もこそばゆくなる。多くの人が当たり前に持っている幸せを手放して、ようやくここへたどり着いた。
「そーちゃん」
「なんだい」
「大好き」
「お願いごとでもあるの?」
 あるよ。明日も明後日も、こんな夜が子守唄になってくれますように。