幸せを抱きしめて

 夜十時くらいまで起きてればみんなそろうっていう夜があって、帰ってきたメンバーから順に新年会を始めることにした。
 ヤマさんとみっきーの帰りが遅かったからか、そーちゃんは飲む量をセーブしながら、りっくんやいおりんの近くでずっとニコニコしていた。ナギっちのここなの話を聞きながら耳をそちらにも向けると、こないだ観たライブDVDの振り返りに花を咲かせているみたいだった。
 楽しそうだったのだけれど、ヤマさんとみっきーが帰ってきて、りっくんたちが二人の話に混ざっても、そーちゃんは腰を上げようとしなかった。穏やかにニコニコしながら、何かを何かで割ったお酒を、ちびちびすするように飲んでいる。
「俺、そろそろ寝よーかな」
「お疲れですか? Good night, タマキ。よい夢を」
「ぐんないー」
 そーちゃん、には声をかけなくても大丈夫かな。念のためヤマさんのところへ行って、耳打ちする。
「そーちゃんぼーっとしてきたから、部屋連れてく」
「おお。風呂は?」
「入るからそんままにしといて」
 みんなにおやすみを言っても、そーちゃんはニコニコしながらお酒を飲んでた。何か考え事してるのかな。重たい悩みではないみたいだからいいけど。
「そーちゃん、部屋行こ」
「あ、眠たくなっちゃった?」
「んー、うん」
 別にどっちでもよかったから、立ち上がったそーちゃんの手を引いて、ゆっくり俺の部屋に向かう。ベッドはすぐそーちゃんを寝かせられるように空けておいた。そーちゃんのベッドも空いてるだろうけど。
「はー、楽しかった」
「楽しかったね」
「そーちゃんこっち。抱っこ」
「……ここに座ればいいの? こうかな?」
 ベッドの上で手と脚をぱかっと広げてそーちゃんを待つと、そーちゃんが俺の太ももの間に、小さなおしりを収めてくれる。そーちゃんの手と脚を俺の背中のほうに伸ばしてもらって、そのまま正面から、ぎゅっ。
「ふふ。あったかい」
「そーちゃんのがあちーよ。お風呂の前に、ちょっと冷まそうな」
 そーちゃんがすんすん、俺の首の匂いをかいでる。肩にうずめられた頭を、揺らさない程度にふわふわ撫でる。酔っぱらわなかったってことは、覚えていたい夜だったんだろうな。飲みすぎないのもいいな、って思えるくらい、とびっきり優しくしてあげたい。
「はー……幸せ」
 気付いたら、口からそんな台詞がこぼれていた。ぴっとりくっついていたそーちゃんが少し身体を離して、大きな瞳をぱちくりとしてみせる。
「どうして?」
「え、どーしてって?」
「僕のほうが幸せ、だと思う……」
「……どうして?」
 どうして、って尋ねられてもすぐには言葉が出ないけど、「僕のほうが」なんて張り合われると、「どうして」って疑問が湧いてくる。
「だって……こんなふうに、してもらって」
「こんなふうって?」
「だから……だ、抱きしめてもらったり、撫でてもらったり、して……こんなふうに甘えさせてもらえて、その……うぅぅ」
 そーちゃんは歯切れが悪いまんま、顔を俺の肩の上にぽすんと戻してしまった。しらふで甘えられるようにはなったけれど、どんな気持ちか説明できるようになるには早かったみたいだ。
「んー、そっか。それは嬉しー、けど」
「……けど?」
「俺も幸せなの」
「だから、どうして……」
 耳を燃えそうなくらい真っ赤にさせて、そーちゃんは疑問を呈する。そーちゃんはもともと優しい人だから、分からないのかもしれない。大切な人に優しくできるってことが、どんなに幸せか。
「いーの、幸せなの。ここにいてね、そーちゃん」
 大切で、大好きな人が、腕の中にいて、甘えてくれる。安らかでいてくれる。無防備でいてくれる。そのうえ、幸せでいてくれる。こんな幸せが、この世にあるなんて、知らなかった。壊さないように、でも離さないように、そばにいられる夜は、ぎゅっとしていたい。
「そーちゃん」
「うん……」
「眠たいんじゃねーの」
「うん……」
「横んなる?」
「でも、お風呂に入らなくちゃいけないから……」
 ぎゅっ、とそーちゃんも強くしがみつく。幸せを抱いたまま、火照りが冷めるまで、目を閉じていよう。