キスの指南

「あんまりちゅうちゅうしないで」
 唇をくっつけあっていたら、そーちゃんがなんだか可愛いことを言った。ちゅうちゅうしてたのは、俺のほうなんだけど。
「やだった?」
「や、じゃないけど……あんまり吸うと、鬱血の痕がつくから」
「でもちゅうちゅうしてーもん」
 ベッドに入って、寝る前に、キスだけならいいよって言ってくれたから、ちゅうちゅうするだけでガマンしてんだもん。ムッとほっぺをふくらませてみせたら、そーちゃんが困ったようにまゆげを下げた。
「ううんと……舌、出してくれる?」
「んぇ?」
「そう……」
 俺の舌の先っぽを、そーちゃんの小さな唇がちゅっと吸う。そーちゃんの唇からもちろっと舌が覗いて、俺の上唇をぺろっと舐める。ぺろ、ぺろ、と何度かなぞった後、濡れたところを拭うみたいに、優しく、優しくちゅっとされた。
「このくらいなら、平気だから」
「舐めんの? べしょべしょになんねえ?」
「平気だよ。……平気な方法、教えてあげるね」
 大人ぶるみたいに言われたけれど、長いまつげが伏せられているから、ちょっと恥ずかしがってんなって分かる。恥ずかしがるそーちゃんを観察していたら、小さな口がぱかっと開いて、俺の唇をぱくっと食べた。
「んむ」
「んっ……」
 そーちゃんの舌先に、ぐっと力が入る。そのまま唇、歯まで割り開いて、こちらに入ってくる。思わず引っ込めていた舌に、そーちゃんのがちょんと触れた。舌に気を取られた隙に、そーちゃんの唇がうごめいて、ぴちゃ、とえっちな音がした。
「そ、……そーひゃ」
 そのままぐいっと身体を引っ張られて、俺がそーちゃんに覆いかぶさる形になる。そーちゃんは舌をねじ込むのをやめてくれない。頭をぐいぐい引っ張られて、そーちゃんがぐいぐい入ってくる。
「ん、んむっ……ん、ふぅ」
 鼻にかかった声が、腰にずんと響く。歯茎、顎、舌の裏まで、そーちゃんの熱い舌がちろちろと這う。息が苦しい。口を閉じられない。唾液がたらたらとこぼれて、そーちゃんのナカに落ちた。あ、ひとつになった──と思ったのもつかの間、そーちゃんの細い首がこくん、こくんと音を立てて、俺が落としたものを飲み込んでいった。
「はっ、ぷは……そーちゃっ……」
「……苦しかった?」
「そーちゃん、俺の飲んだろ」
「分かった? こうすればべしょべしょにならないんだよ」
 大きなつり目が艶っぽく細められて、心臓を大きく震わせた瞬間、ごろんと体勢を逆転された。そーちゃんが襲いかかるみたいに、俺に覆いかぶさって唇にかぶりつく。今度は、俺にそーちゃんのがこぼれてくるんだ。
 全部残さず、飲んでやる。ごくんと喉を鳴らしながら、うなじをそっと引き寄せる。差し入れられるだけの大人しい舌は、「吸って」の合図を示してる。
 舌先をちゅうっと導いてやったら、俺の腹にまたがった細い腰が、ぴくっと震えた。