愛なんて

 君が「寂しい思いをした人だから、僕と一緒にいてくれる」なんて、残酷じゃないか? ずるくないか? 君はずっと、寂しくなくなるために努力してきたのに。
 どこにも行かないで、と動画の中の僕が、お酒を飲みながら君にもたれて、嘆いていた。
 僕は環くんに本気で腹を立てたこともあるし、涙を見せたこともある。弱って寝込んだ時もそばにいてほしいと思えたし、もう誰にもすることはないと思っていた、大切な人の話もできた。だけどそれはやっぱり、僕の全てじゃない。僕の全てじゃないのに、君は身体のうちの一番大切なところを明け渡してくれて、僕もそうした。
 身体の入り口をそっと合わせて、ちゅ、とかわいい水音を鳴らす。溶けてしまいそうなくらいやわらかいけれど、時に意思すらも操る、したたかな場所だ。君に捧げた。
「君は、僕が『寂しい』って言ったら、悲しいのかな」
「どうして? 俺がそーちゃんとこ、飛んできゃいいじゃん」
「でも、どんなにそばにいてくれても、『寂しい』ということは、『足りない』ことと同じじゃないのかな」
 返答に困った君が、仕方なさそうに僕の頭を撫でる。僕はシーツに背を沈めたまま、全身の自由を形だけ手放す。もう一度唇が近づいてきたから、目を閉じた。自分が抱く気持ちに押しつぶされそうで、息を潜めた。
 愛なんて、伝え切れるほど小さいなら弱い。この身に注がれるものが足りないのではなく、湛える器たる僕が足りない。もっと大きくて強い生き物になって、君を包んで、言いたかった。僕がいるから寂しくないよ、と。
 君の寂しさは、いつまでも寂しがっている僕の愛で、果たして埋まるだろうか? 到底そうは思えなくて、思い知る夜、僕の寂しさが亀裂のようにつのる。
「でも、そーちゃんが寂しくなかったら、俺、たぶんいらないじゃん」
「そうかな。もっと健全な関係で、一緒にいられたんじゃないのかな」
「いらんないよ。そーちゃん、寂しくなかったらきっと、一人でいるよ」
 だからさ、と君が優しく笑う。続きを聞くまで寝ていられなくて、思わず身体を起こす。迫るような姿勢にもおかしそうに笑って、僕の全てを知らないくせに、僕より残酷なことを言った。
「寂しいって言ってくれて、ありがと」
 でも、行き場のなかったその言葉を、君に向けさせたのは君だから、ずるくない。
「僕だけがずるいみたい」
「そーちゃんもずるいことなんてあんだ」
「あるよ。隠していたいけど……」
 それは、君に会うまでなかったかもしれない。僕の全てをさらけ出すより速く、君によって新しい自分が生まれるから、産声のようにいつも泣きたい。それを僕より早く見つけるのが君で、気付いた時にはいつも、守られている。
「弱みなら、握ってやんなきゃな」
 僕の愛なんて、上手く伝わらなくても、君が幸せそうに笑っているから、もどかしくて寂しい。