初めて朝を拒む夜

 寂しかった。寂しいのは嫌だった。だから考えて考えて、どうして俺が寂しいのかを知った。
 ずっとそばにいるよって、俺が大事な人に誓ってやることで、その寂しさは少しだけ癒えた。ずっとそばにいてほしいという願いは、死ぬまでこの星が回り続けていてほしいと願うことと同じだ。今日まで何事もなく回り続けていたのと同じように、たぶん一秒後も回り続けているだろうけど、真実は一秒後にしか分からない。一秒後には、止まっているかもしれない。
 だけど俺は何があっても回ってる。代わりにそう決めたら、楽だった。楽なのはいいことだと思う。夜があまり怖くなくなったし、野菜が少し甘くなったし、そーちゃんの肩の力もちょっとだけ抜けて、笑ってくれる時間が前よりも増えたし。
「ちょっと、一人で考えさせて」
「……うん。そのほうが、いいかも……」
 パタン、と静かに閉じた扉の前から俺は動けなくて、仕方なく座り込んだ。そーちゃんがまた部屋から出てくるのを待ってるわけじゃない。結論を聞きたがってるみたいで、そーちゃんも嫌だと思うし。
 だけど、とつぶやいて膝に顔を埋める。涙は出てこない。そーちゃんはきっと、まだ泣かない。
 そーちゃんも俺と同じように、ずっと寂しがっている人だ。理由は聞いたわけじゃないけれど、たぶん家族による。俺は、そーちゃんが寂しい理由をきちんとは知らない。言ってみ、とは何度も促したけれど、そーちゃんの家族に関する言葉は、とても歌のように滑らかには出てこない。まるで無理やり飲まされたいくつもの鉄のカタマリを必死に吐くように、いつも苦しげに絞り出された。
 俺はそーちゃんのことが大事だし、そばにいてほしいと思うし、そーちゃんも少なからずそうだといいなと願っている。それは、そーちゃんが俺と同じ、帰る家を失ったコドモだったからじゃない。親父を殴った俺だって、家族と手をつなぐ夢は見る。理が泣きながら俺を抱き締めてくれた時、俺は本当に嬉しかった。
 そんな夢をなくしたらつらいよ。
「……そーちゃん」
 ノックはせずに、座ったままで名前を呼んでみる。なに、と精一杯に優しく奏でた声が、昨日までと同じように俺に応える。
 リュウ兄貴は知らない。「自分だけひとりぼっち」になったのは、あの日のそーちゃんのほうだ。そーちゃんが最後の夢をなくした時、俺の声はもう、そーちゃんには届かなくなるかもしれない。